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元「国連平和大学 Asian Peacebuilders Schalrship (APS)」にいた学生のブログです。「日本一APSに詳しいブログ」を目指して、APS、海外大学院留学、フィリピン、コスタリカ生活など色々書き綴ってます。

医学部における女性差別問題レビュー:まとめと考察

10月13日に文部科学省より、医学部による女子差別問題に関する調査結果が発表され、先日問題が発覚した東京医科大学以外にも、同様の取り組みをしている大学が複数ある可能性が報告されました。

国連平和大学(University for Peace)のジェンダーの授業でこのテーマについて報告したこともあり、今回は医学部における女子差別問題について以下まとめてみます。ちなみに、既にこの事件は海外メディアでも報じられていたため、他の受講生も知っており、みんな日本のジェンダー観にびっくり(がっかり)していました…。

 

医学部における女子差別問題:東京医科大学のケース

「医学部の入試で女子が差別されている。」なんとなく大学受験の時にちらっと耳にしたことがあったような言葉ですが、当時はただの噂だと思っていました。

しかし今年、それが実際に行われていたことが発覚しました。発覚したのは私立医学部の雄東京医科大学(以下、東京医大)。文部科学省局長の息子の裏口入学が発覚し、調査が進む中で女子受験生(と一部の男子受験生)への入試時の差別が明らかになりました。

どうやって差別したのか?

差別の具体的な内容は、東京医大の内部調査委員会が作成した報告書で確認することができますが、概要は下記の通りです。

 

・対象:女子受験生+三浪以上の受験生

・点数操作の方法:

1)全ての受験生の点数を8割に減点

2)現役+二浪までの男子受験生に20点、三浪の男子受験生に10点をそれぞれ加点

3)全ての女子学生+四浪の男子学生には加点無し

 

こうした信じられない差別的得点操作の理由ですが、下記の記事によると、女子学生の割合が2010年の入試で4割弱に達したことで、翌年以降、女子学生の割合を3割以下に抑えるためだったそうです。

なぜ「3割以下」にする必要があったのか?

今回の東京医大の女子差別問題の背景としては、現役医師の方が下記で詳しく紹介してくださっています。

 

要約すると、大きく分けて4つの理由が挙げられています。

・理由1)入学生は将来の東京医大関連機関の医師として働くことが期待されているため

・理由2)女性医師は出産・子育てなどで離職する人数が男性医師より多いため

・理由3)(日本は諸外国に比べて対人口の医師数が少なく)過酷な労働環境にある

・理由4)診療報酬制度により、病院独自で収支を調整できないため

 

このうち、理由2)については、具体的な統計を厚生労働省が作成した資料で確認することができます。女性医師は35歳で就業率が最も下がり(76%)、同年齢の男性医師(89.9%)と比べると約14%の開きがあります。そして離職理由の第一位は出産第二位は子育てとなっています。 

加えて理由3)についても、別の厚生労働省による資料によれば、男性医師の一週間の平均労働時間は57時間59分(年代別では20代医師が最長の64時間59分)、女性医師は51時間32分(年代別では20代医師が最長の59時間12分)とされており、厳しい労働環境となっています。

 

従って、流れとしては、

・医師の労働環境が過酷のため、

・女性医師が出産・子育てといったライフイベントで離職せざるを得ず、

・一方病院は診療報酬制度のため収支を調整できず、人材補填が難しい状況にある。

・従って、大学は入試時に将来の男性医師が多くなるように入学者を操作

と、言えそうです。

今後について

すでに東京医大のケースは大きな社会問題として議論されていますが、これから全国の医学部で女性差別に関する調査がさらに進めば、一層大きな社会的枠組みの中で考えなければならなくなると思います。

女性医師の離職率が最大の問題なのだとすれば、例えばすでにいくつかの病院で導入されている院内保育を充実させたりと、色々な政策は取れるかと思いますが、一方で医療業界全体にある男女間の力関係にも注意する必要があります。きちんと調べる必要がありますが、医療は一般的に男性優位な社会と言われており、そこにはジェンダー学で言う「hegemonic masculinity(覇権的男性性)」も今回の問題における大きな原因の一つではないかと考えています。

ただ単に大学を批判するだけでは問題の解決に繋がらず、日本の医師制度や医療制度そのものも一度見直す必要があるような気がします。

以上、最後までうまくまとめられなかったのですが、医学部における女子差別問題のレビューと若干の考察でした。こちらの記事も随時見直して加筆修正していこうと思います。